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  刹那

このひとひらの瞬きに(ゆだ)ねる
神秘なささやき
誰もが追い求めてやまない
慟哭(どうこく)の山藤と
木魂(こだま)するさえずり

豹のような(バックシャン)をもつ女が
頬を染めて
また涙を浸して踊る
留めることのない面影は
果てしなく花弁(はなびら)散る
湖畔を濡らす
哀しい斜塔だ

この失われゆく夜を囲む
男も女もそれぞれの短い
地獄絵を恐れて
更けてゆく先のもっと先の
気を失うような感情の(もつ)れた
葡萄酒を静かに含む
舌の先に感じたかと思うと
それは違った僅かの
味覚の苦痛に変わってゆく

男が愛した全ての女の
(にわか)に輝きだした夕陽のように
鋭くて燃え(たぎ)った
しかし手の届かないかなたの
(たわむ)れの恋心がたちこめた瞬間
もう離れていく
時間という質量をなくして
別れてゆく
その(とうと)い刹那よ